昨年の11月に、銀座 北欧の匠に再びお邪魔しました。(2016/11/27)
北欧の匠といえば、ハンス オスター(Hans Oster , Hans Øster) さんの正規取扱店であることでも有名です。
(先日アップした、植物店のmokuhonさんはこの時に発見したものでした。)
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財布購入後も数回訪ねましたが、今回はまたハンスオスターさんについて、以前から気になっていたことなどを見たり、聞いたりと、色々リサーチしてきました。
購入を検討されている方など少しでも参考になればと思います。
以前、購入したハンスオスターさんの財布をこのブログでも紹介させていただきました。
現在、その財布は購入してから2年以上経っています。パーツ張替えなどの修理が可能らしく、自分の財布は今のところどうでしょう?と質問したところ、全然修理なんかいらないレベルと言われました。当たり前ですよね。笑
表面のつやは増すばかりで、細かい傷などはどんどん出来ていますが、ステッチなどももちろん解けることなくピンピンしています。
こちらのリリー(ライラック)モチーフはハンスオスターさんの家紋のようなモチーフらしく、このデザインのものには留め具にマンモス牙パーツ(通称 象牙)が使われています。(写真の白い部分)
なんとこのパーツ、2、3年前くらいから、素材変更がなされています。
新しい留め具素材はタグアナッツ、またの名を象牙椰子(ぞうげやし) というものです。
植物としては、アメリカゾウゲヤシ属 (学名: Phytelephas)から分類されるものなようです。
(実際にタグアナッツが使われているハンスオスターさんの製品の写真は今回は掲載していませんが。現在、北欧の匠の店頭に今あるものはおそらくタグアナッツのもの。)
こちらのジャムこばやしさんのHPにも掲載されています。アボカドの種を思い出します。ヨーロッパではチェスの素材などとしても使われているようです。
象牙椰子で画像検索していただくとかなりツルツルに磨かれた写真などでてくると思います。
素材変更されたのは、マンモス牙が手に入りづらくなってきたんでしょうか?
それともまた気まぐれでマンモス牙に戻ったりするんでしょうか?
僕が購入した時は象牙パーツからタグアナッツへの過渡期だったのでしょうか?
とりあえず今となっては希少なものが入手できて幸運です。
↓マンモス牙パーツ(マーブル感で見ればわかります。)
タグアナッツの方は新品の状態では、マーブル感はなくもう少し透明感があるような、樹脂っぽい、プラスティックのような感じでした。
店員さん曰く、タグアナッツの方も使っていけば、結構アジが出ますよ。とのことでした。
ハンスオスターさんはおそらくですが、スタッフの方からいろいろお話を聞く限りでは、そこまで細かいディテールにこだわっている訳ではない印象でした。例えば使用する革も色を微妙に変えてみたり、その時に応じて臨機応変に対応している感じがします。
なので作る時期によって微妙な変化があるんではないかと思います。
こちらの以前の比較記事でもパーツの色が違うことがわかります。
結果的に道具として長持ちする事がハンス オスターさんの一番の目的のようです。
↑ライラック模様の跡が付いてきました。
そして仕様の話としてもう一つ。
ハンスオスターさんは現在、手縫いからミシン縫いに変更されたとのことです。
もっともミシン縫いになったのは、ごく最近の話ではないみたいな雰囲気でしたが。
昔の作品は確実に手縫いみたいですね。
なぜミシンになったかというと、それはハンスオスターさんが「道具として長持ちする」という事を物作りのポイントとしているからなようです。
より合理的な方を選んだ結果らしいです。
ミシン縫いですと、手縫いよりも時間が短縮されるので、多少コストが抑えられるようになったとのことです。
なぜレザー製品の縫製は、手縫いかというと、手縫いだと糸にかなりのテンション(張り)をかけられるからだそうです。
ミシンで縫ったテンションにゆるみがある縫製ですと、万が一、糸が切れた時にそこからほどけてしまうそうです。
ミシン縫いでも、強力なテンションが保たれれば問題ないのでは。ということで、ハンスオスターさんはミシンの機械自体をカスタム(調整)して、手縫いに匹敵するような糸のテンションをもたせた仕様のミシンを使われているそうです。
そして、通常、手縫いは、菱目打ちで縫う場所に穴をあけていき、そこに交互に糸を通していきます。
菱目打ちは、4本や2本など連続して穴があけられるものを使うようですが、ハンスオスターさんは穴が1つの目打ちを使っているようです。
ちなみに菱目打ちは、菱形(◆)な形なため、長い間使っていると、その穴の鋭角な角の部分から裂ける場合が、あるようです。
(ただ、長年使った場合、強いていえばそこから壊れる程度のレベルの話で、菱形の目打ちだからすぐ壊れるという事では無いです。)
同じく北欧の匠に取り扱いがある、日本の職人さんが作っているという、トラッドバイソン(TRAD-BISON)は、菱形が壊れる原因になるという事から、菱形ではなく、丸形(●)の目打ちを使っているようです。
丸だと鋭角な角がないため、裂けやすい場所が無い、という理論です。細部に色々と工夫されているようです。
(メモ書きすみません。)
ちなみに、トラッドバイソン(TRAD-BISON)は、全て手縫いだそうです。
なので、一つ完成するまでかなり時間がかかるみたいです。長財布で1ヶ月に4個くらいしか作れないようです。
普通の財布制作の観点から見ると時間をかけすぎらしいです。
トラッドバイソン長財布の価格は7万くらいだったと思います。下が丸い形のコインケース小銭入れが5万くらい。
ハンスオスターさんの財布よりも高いですが、制作に時間がかかる話などを聞いていると、そんな高額な値段も妥当な気がしてきます。
トラッドバイソンの宣伝みたいになりましたが、僕はもちろんハンスオスター派です。笑
聞いた情報などを比較、羅列しているだけです。
話はハンスオスターから逸れましたが、ハンスオスターに再び戻しまして、↓このマチがついているタイプのこの部分のみ、ハンスオスターさんの手縫いです。(写真のVの部分) こちらの部分はミシンでは縫えないようです。ミシンに切り替えたとはいえ、手縫いでも、ものすごいスピードで縫う技術を持っているらしいです。そして、ミシン縫いも手縫いもパッと見では違いがわからない精巧さ。
そういえば、北欧の匠によく行かれる方はご存知かもしれないですが、店内奥にハンスオスター作の比較的大きめなビンテージのバッグが展示してあります。
そのバッグは、なんと、若かりし頃のハンスオスター氏が、当時付き合っていたガールフレンドにプレゼントした物らしいです。
(おそらく全て手縫いで作られている)
そして、その当時のガールフレンドとは、現在のハンスオスター氏の奥様です。
そのバッグは北欧の匠の社長さんが、所有者である奥様から一時的に借りているらしいです。という事情もあり非売品です。笑
ハンスオスター氏曰く、そのバックの後ろ側 底部は、革選びを間違えているらしく、今見ると恥ずかしいみたいです。
作る道具の部分ごとに、何の動物を使うか、その動物のどの部分を使うかや、方向など、部分に適した革を見極めてレザー製品は作られるようです。
北欧の匠の方が仰っていましたが、ハンスオスターさんは革を部分ごとに見分けて、パーツごとに使い分けるセンスはかなり卓越しているようです。
一方でトラッドバイソンの方は、財布なんかは、内側も全て表面と同じ牛革を贅沢に使っているようです。
(本来は薄くて滑りもあるゴートレザーを内側には使ったりするものらしいのですが。)
そんな革の選び間違えなんて、素人目には全然わかりませんが、革をやっている人とかだと分かるんでしょうね。
逆に言えば、今はおそらくそういったミスはされないと思いますので、そんなハンスオスターさんも恥ずかしくなってしまうようなバッグなんて、ある意味でとてもレアですよね。
そして奥さんのくだりはなんだか心温まるエピソードでした。
ここでついに直撃しました。
2年前に財布を購入した直後から、その存在を知り気になっていたものです。
それはこちら。写真付きです。
そうです。ハンスオスター財布のナチュラルカラー。
染色されていない白ヌメカラーです。(一般的には、このカラーはヌメという名前で呼ばれることが多いですが、正式には白ヌメと言うそうです。)
ブラウンの財布を購入した時には白ヌメカラーが存在することは知らなかったです。
ハンスオスターといえば、僕が持っているブラウン(ダークブラウン)もしくはブラックの2色展開というイメージですよね。
ハンスオスターのブラウンカラーは初期設定がかなりダークブラウンで、最終的にはブラックになっていくため、どちらかというと最初からブラックを買って変化が少ないよりは、経年変化を楽しもうって発想からブラウンの方が人気みたいです。
こちらのハンスオスター白ヌメカラーは、もともと存在するようで、ごく少量、稀に入荷するようです。
といっても実際作られる数は少なく、所有している人は数えるくらいしかいないのではと仰っていました。
たまらないですね、、、。
通常のタイプで1年くらい待つこともあるとの事で、白ヌメで、さらに型も指定したら、いったい入荷するまでにどのくらいかかるのでしょう。
しかし、この色はかなり汚れやすいみたいです。
水分などもすぐにシミになりますし、日にも焼けるし、綺麗に使いたいならかなり気を使わないと見た目が汚くなってしまうようです。
上記の経年変化って話でいえば、この白ヌメは経年変化感が半端ないですね。
ガシガシ使いたい人にはオススメかもしれません。
ちなみにメンテナンスは手でさするとか、布でフキフキするくらいで、決して油を注入してはいけません。
しかもこの写真のものは、タグアナッツではなく象牙パーツ。(決してタグアナッツがダメということではないですが。)
かなりレアです。
素材の染色については、ハンスオスターさんも、トラッドバイソンも、両方共、白ヌメ革の状態で仕入れて、ベジタブルタンニンなめしをし、その後、染色なども全て自身の手によってやられるそうです。
その理由としては、白ヌメの状態では比較的、良質な革が選べるが、すでに染色している革から仕入れるとなると、あまりいい革が選べないというような理由なようです。
うーん、いいですね。
この万年筆ホルダーなんかも、注文すれば出てくるんでしょうね。いつか。
ベルトとかも。
この辺は本当に出会いだと思うので、もし店頭にて偶然見つけたら、ラッキーですね。
ナチュラルカラーについての話も終わり、それ以外に聞いたことです。
ハンスオスターさんは、ベルト(ちなみに3万くらい)、バッグ(ちなみに40万くらい、大きさや使用などにより異なる)も、店内にはありますが、以前は靴やサンダルなども作られていたようです。僕も見たことはないですが。
ハンスオスターさんの製品は革好きが最後に辿り着くみたいな言われ方をしますが、実際、世の中に技術的に優れた革職人はもっといるらしいです。
とはいっても、やはりハンスオスターさんが仕上げるものには唯一無二な雰囲気があります。
実際にデンマークの他の革職人の方に、ハンスオスターさんの同じ木型、パターンで同じ製品を作ってもらったことがあるらしいのですが、やはり仕上がりは全然違うそうです。
目をつぶってもどちらがハンスオスターさんのものか分かるくらい、なぜか同じものは出来ないということがあったようです。
その辺はお店の方も不思議と言ってました。
ハンスオスターさんの家系は、お父さんも、おじいちゃんも代々、革職人の一家らしく、小さい頃から革と親しんで育ってきたようです。
代々、革職人として続くオスター家の魂みたいなものが製品に宿っているのか?とかも勝手に想像したり。大げさですが。笑
お店の人曰く、職人の人柄も必ずその作品に表れるとのことでした。
どうせ使うなら、良い人の作った製品の方がいいですよね。
とても良い方らしいですよ。ハンスオスターさん。
トラッドバイソンを制作されている方も、革製品をかつて制作している時に、銀座の北欧の匠のハンスオスターの製品を一度見てみたら、ということで、お店に見に来たのがトラッドバイソンを始めるきっかけになったようです。このエピソードはちょっとうろ覚えなので間違ってたらすみません。
あと、それぞれの製品のコバについて。(縁の部分っていうんでしょうか?)
ハンスオスターさんのものは、コバは削り出して一回塗るくらいで、コバに限ってのこだわりとしては薄めらしいです。
それは削れたらまた塗り直して使えばいいという理論から来ています。
一方、トラッドバイソンはコバにもかなりこだわりを持っているようで、ヤバイくらいものすごくツルツルです。
なわりに、こちらも塗り直したりなど、修理、メンテナンスは可能なようです。
一生モノという言葉がありますが一生では消耗できないくらい、もしかしたら丈夫なのかもしれません。来世でも使えるかも。
サイトにもありますが、トラッドバイソンはかなりのオーダーが出来るようです。
財布の形、色、デザイン以外にも、こういった道具を作ってほしいとかそういう要望も柔軟に聞いてくれるそうです。
北欧の匠の店主さんに頼むようです。値段もそこまでオーダーしたからバカ高くなるとかはないようです。元々はオーダーによる革制作をメインとしていて、その後に、定番商品もあったほうがいいのではと、後から作られたものなようです。
というわけで、かなり長くなりましたが、以上今回のリサーチ内容でした。
ぜひ、参考にしていただき、後悔ない一生モノをゲットしてください。
twelve 青木 健太朗
※ハンスオスターさんと、さん付けで記載しているのは、なんか人の名前だからで、トラッドバイソンはブランド名なので、さんはつけないでおきました。
※僕は名だたるブランドの革製品を使用してきた遍歴などもないですし、革のクラフトに対しても特に詳しいわけではないので、何かおかしな内容がありましたらすみません。
※間違っている部分があったり、削除希望の箇所がありましたら、aoki@twelvedesign.jp まで、ご指摘ください。