実生記録まとめ ③
#25
パキポディウム バロニー 変種 ウィンゾリー
Pachypodium baronii var. windsorii
上記のバロニーの変種。細く伸びがちなバロニーよりももっと幹が太くなるのでとても人気の種類。
僕は大きいものは未だに持っていません。
こちらも5粒中5粒発芽したので100%なんですけど、台風後の猛暑にやられました、、、。
という訳で、これが遺影となりました。同じ環境で育成しているので、直射日光などで死ぬときは同じ鉢内は大抵全滅となります。
配置場所にどうして気が回らなかったのかと悔やまれます。
それにしても、やはり貴重なものばかりがすぐ死にます。
#26
ゲオヒントニア メキシカーナ
Geohintonia mexicana
一属一種の希少サボテン。
多分、↓の写真ではどれが苗かわからないと思います。
手前の方。
これです。先発隊。
少し揃ってきました。
本当に小さいです。しかも、実生のものはなかなか大きくなりません。接ぎ木にするとある程度成長は早いのですが。
まあ、少しずつ大きくしていこうと思います。
数年後には少しは何か変化するでしょう。
園芸を始めて、何だか時間の捉え方が変わったように思います。成長が遅い植物に合わせて生きたら一生があっという間に終わりそうです。
#27
セコイアデンドロン ギガンテウム
Sequoiadendron giganteum
通称 : ジャイアント・セコイア
地球上で最大の巨木と言われるやつを育ててやろうと思い、実生してみました。
先日、ウェルウィッチアの実生記事を投稿しましたが、このセコイアデンドロンもまた悠久の時間を感じる植物ですね。
まだ針のような姿。
カリフォルニアに原生している巨大な大きさになるまではこれから1000年、2000年、3000年。
と思っていましたが、この夏に全滅。
多肉、塊根植物の幼苗の扱いよりももっと水切れに注意すべきだったように思います。
#28
ユーフォルビア ステラータ
Euphorbia stellata
和名 : 飛竜
白い塊根と、緑の触手のような枝を何本も出す姿が人気のタコモノ ユーフォルビア。和名のセンス、かっこよさや、親しみやすさも、多少なりとも、その植物の実際の人気に関係していそうな気がします。
この写真ではまだ米粒以下のレベル。
そして個性が出てきたやつ。
これから塊根になるボディ以上に大きな手を伸ばしています。
これは今年の夏に播種したものなので大きさはまだこの写真くらいです。
葉の部分がどんどんでかくなりました。
こういう中心の成長点から何本も長い枝を伸ばすものを日本ではタコモノと言いますが、海外ではMedusoid (メデュソイド) っていうようです。 ↓これがステラータの大きくなったやつ。
Medusoidっていうのは、クラゲのような、クラゲに似たというような意味だそうです。確かにクラゲっぽいかも。
メデュソイドって、ギリシャ神話に登場する髪の毛が蛇の怪物メデューサから来ていると勝手に思いこんでいました。だって蛇の髪の毛を伸ばしているみたいにも見えないですか?
そういえば、同じくタコモノユーフォルビアである、Euphorbia caput-medusae (カプトメデューサエ) は英語の通称では、”Medusa’s Head” (メデューサの頭) という名前が付いているので、やっぱメデューサってニュアンスがあるのか。
そもそもクラゲの”Medusoid”と、怪物メデューサの”Medusa”という単語自体が関係性があるのかもですね。
ちなみにメデューサって何?っていう人のためにこの画像を拝借しました。かなりミニサイズです。
有名なVERSACEのロゴもメデューサがモチーフです。
ちなみにVERSACEがこんな怪物を起用した理由としては、人々を魅了し(恋に落とし)、戻ってこなくさせるからだそうです。こわっ。
というか冒頭に登場したE.ゴルゴニスも、同じくメデューサのゴルゴン三姉妹から来ているようです。
超ちなみにですが、メデューサは三女で、他の二人はというと、長女ステンノー、次女エウリュアレーと、メデューサ以外全然聞いたことない名前でした。
英語と園芸の両方に精通している方、クラゲとメデューサの語源について教えてください。
#29
パキポディウム サキュレンタム
Pachypodium succulentum
和名 : 天馬空 / 友玉
上記に出てきた、ビスピノーサムに似た塊根性のパキポ。
着実に少しづつ大きくなってます。成長に合わせて混雑してきました。
↑床に落ちてたAgave titanotaの種を1粒置いといたら、発芽して一緒に大きくなってます。
表面の緑のボディが少しずつ硬そうになってきて、そろそろ植え替えダメージに耐えられそうかなということで植え替えした時の写真です。表面が柔らかい時は防御力は弱そうですが、その分成長が早い気がします。一方で表面が丈夫に出来上がってくると、その分成長も遅くなるような。
植物の本体は地上部ではなく根にある。みたいな表現を聞いたことがありますが、やはりこうして全貌を見ると、地上部と同じように根っこも成長していて、根の大切さを感じます。
それにしても丸々とコンパクトで引き締まっていてかわいいです。
#30
パキポディウム サウンデルシー
Pachypodium saundersii
和名 : 白馬城
パキポディウムの中でも、僕が初めて手にした種類なので、個人的に思い入れが深いです。
割と丈夫な気もしますし、ラメリー、ゲアイー、バロニー、ルテンベルギアナム、メリディオナレあたりのパキポディウムに比べて太りやすいし、個人的に実生オススメ種です。
と言っても、僕が育てているものはあまり太っていませんね。スマート君です。人間界とは裏腹にデブが重宝されるという不思議な世界。
うちの栽培環境は、水を切り気味で育てても、やはりもうちょっと日の光と風が足りないような気がします。
植物を撫でてかわいがってあげるとよく育つと言いますが、強風なども同様で、外的な刺激を受けると植物ホルモンであるエチレンが植物内に分泌されるそうです。
エチレンは気体状の物質で、リンゴから出てることや、バナナの追熟(老化させる)に使われることで有名です。
また、植物の細胞を縦向きから横に変化させて、横に肥大するような成長に変えるという効果もあるらしいです。
もやしの栽培においても、もやしを太くするためにエチレンが使われているそうです。
おそらく、基部が細いと植物自体が風などの外的要因で倒れたり折れたりしやすくなるので、それを防ぐために風を感知して、太く頑丈な姿になるようにホルモンが分泌されるのではないでしょうか。
室内栽培でサキュレーターを回した方がいいというのも、鉢内の空気の循環の他にそう言った効果もあるのではないかと思っているのですが。どうなんでしょう。
もっと自然の強めな風が欲しいところですが、環境はそう簡単には変えられないので、今のままで工夫していくしかないですね。
根が結構ボサボサに張ってくれているのは嬉しいですね。
実生時には菌があまりないような用土がいいのですが、やはり腐葉土などの有機質の用土をたくさんブレンドしたほうが育ちが良いように思います。
↑その場所の用土の栄養素が関係したのか、その種子の遺伝子を始めとするポテンシャルの差か、同じく育てても個体差は出てきますね。
サボテン屋さんのおじいちゃんも言ってました。「人間にも、小さい奴もいれば、太ってて大きな奴もいる」と。
↓ついに一人暮らしのマイホームを構えることができたサウンデルシー。
まだ集合住宅に住んでいるものもいます。
#31
パキポディウム メリディオナレ
Pachypodium meridionale
同じキョウチクトウ科のプルメリアとかもなんか思い出します。細長いパキポディウムです。
パキポの中でも背が高くなる種類です。
この株はほんの数粒蒔いて一個だけ発芽したものだったのですが、おそらく冬の寒い時期に潅水したのが原因で、ちょうど用土の位置くらいがしぼんでいたので、土から抜いてみると、根腐れをおこしていました。
一本しかない株が死にそうになのは残念です。
このままにしておくとおそらく死ぬので、ダメ元でしぼんでないくらいの位置で胴切りしました。
ちょうど土から顔を出している少し上くらいの位置で切って、挿し木をする感覚で殺菌剤→発根剤を塗布して無菌用土に挿しました。
するとそれからしばらくすると、発根して再度、葉が展開しました。
現在の様子。また葉が落ちちゃいました。休眠していなければまた葉が出てくると思います。
植物に異変を感じた場合は、その症状にもよるとは思いますが、そのままにしているよりも、何かしら行動をした方が良い気がします。
特に根腐れ系は、赤腐れなどの菌が株に回ってしまうと、もう終了なので、菌が回ってない部分まで切っていくと助かる場合もあります。リスクもそれなりに高い気がしますが。
季節やその株の体力など、様々な要因が影響してくると思います。
#32
パキポディウム ゲアイー
Pachypodium geayi
和名 : 亜阿相界 (ああそうかい)
和名のアアソウカイ(亜阿相界)は、原産地のマダガスカルが、アジア(亜細亜)とアフリカ(阿弗利加)の境界であることに由来する。
小説家でサボテン研究家の龍胆寺雄が命名した。 wikipedia
成長は結構早い気がしました。
これが一年強くらいの期間を経た、現在の姿。
結構でかくなりましたね。
しかもそんなに伸びてないし。
そういえばパキポディウムって人気がある分、知らない人も多そうですが、毒ありますよね。アデニウムとかも。
パキポと同じキョウチクトウ科のキョウチクトウは、wikipediaによるとこんな強力な毒があります。↓
キョウチクトウ 毒性
花、葉、枝、根、果実すべての部分と、周辺の土壌にも毒性がある。
生木を燃した煙も毒。腐葉土にしても1年間は毒性が残るため、腐葉土にする際にも注意を要する。
腐葉土を燃やした煙も有毒なんてかなり強力ですよね。↑はパキポディウムではなく、キョウチクトウの毒性なので、パキポディウムにどれだけの毒性があるのかわかりませんが、樹液には毒があるそうですね。
パキポディウムに近縁のガガイモ科の植物も切ると白い液を出す奴がいますがあれも毒なんでしょうか?
ユーフォルビアや、ドルステニアなんかも白い毒入り樹液を出しますし、とりあえず白い樹液や、パキポの樹液も直接触れたり、樹液がついた手で目をこすったりしない方が無難ですね。
以前、素手でパキポなどいろいろな植物を植え替えをしたり根をいじくり回していたら、手がしびれたことがありました。それらが原因なのかわかりませんが。
#33
パキポディウム ラメリー 変種 ラモスム
Pachypodium Lamerei var. Ramosum
ラメリー(ラメレイ)の小型版って感じらしいです。
結構発芽しました。
表面がまだ若々しく、注意が必要な段階。
少し表面が硬くなってきた雰囲気です。
これが現在の様子です。上記掲載のゲアイーほどの成長率は望めませんでした。
#34
ユーフォルビア スコエンランディ
Euphorbia schoenlandii
和名 : 闘牛角
↑子葉が可愛い
↓子葉が取れるとなんだか大人な気分です。
スコエンランディは大きい山採り株は結構かっこよくて好きなんですが、縁がなく我が家には小さいこいつらだけです。
闘牛角という和名も個人的には好みです。
#35
パキポディウム グラキリス (グラキリウス)
Pachypodium gracilius
キングオブパキポですね。現在のコーデックスブームのいちばんの人気者ってイメージです。
ちょっと発芽しすぎて、鉢がパンパンになってしまいました。デブになって欲しいですが、デブになる隙間ないですよね。
隣同士の根が邪魔しあって、枯れたりしたらヤダな〜と危惧しつつも、もう秋なので、このまま冬に突入して来春に植え替えします。
かなりの満車率ですが仲良くやってください。
うちのグラキリスです。この一個しか持っていません。
以前「サボテンオークション日本」様から購入しました。
手のひらサイズより一回り大きいくらいですが、傷もあるし比較的、安めに入手できました。
購入時からしばらくの間は葉も出ずにこいつは本当に生きているのか?みたいな定番の疑惑が何度もかかりましたが、今では葉も展開してちゃんと根もボサボサになり元気にしています。
ラスト
#36
ディオスコレア エレファンティペス
Dioscorea elephantipes
和名 : 亀甲竜、アフリカ亀甲竜
上記のグラキリスが人気者ってことですが、こちらもかなりの人気がある亀甲竜です。どちらかというと亀甲竜の方が小さいものは手に入りやすいですかね。
冬型なのでちょうど今くらいの時期に起き始めます。(8、9月)
亀甲竜も割と実生は簡単なイメージです。
最初は水は多めでいいと思いますが、塊根もできてきたら割と放置しておいても大丈夫な気がします。
↓これは、一年くらいの期間でかなり大きくなった個体。用土に埋まっていて見えない部分も多少あるので。
なかなか大きくならないと言われますが、ポテンシャルが高い個体だったのかピンポン球くらいの大きさになりました。
ちなみに、実生後は塊根は気になるところですが、土に埋めておいた方がご機嫌なようで、早い成長が望めます。
安定してきたら上から腐葉土など有機質な種類の用土を追加したように思います。
ただある程度の大きさになると、成長スピードは一気に落ちるっぽいですね。
巷に出回っている数万円で買えるゴツゴツの亀甲竜はやはりかなりの年月がかかっていそうですね。ウルトラ怪獣のブルトンみたいなやつ。
蔓性なので成長期の寒い時期は蔓をもさもさと茂らせます。
↓この写真の中でも亀甲竜が5、6体同居しています。
これはもう少し大きいやつ。ブルトンには程遠い。
いかがでしたでしょうか。
実生、未体験の方には興味を持ってもらえたでしょうか。
最初はポイントなど色々あると思いますが、少し慣れれば独特の楽しさにハマること間違いなしです。
高いお金を出して成長に要する年月を一気にすっ飛ばして大きな株を買うのも良いのですが、実生の良いところは何よりも、愛着がものすごい沸きます。
あんな小さくてもプックリと生きようとする健気な姿を見ると、普及種であろうとレア種だろうとみんな可愛くなってしまいます。
しかも蒔いた種子が一気にたくさん発芽した時は、富豪になったような独特の贅沢な気分を味わえます。
一方で、熟練の方でも、「本当にたくさんの植物を枯らしてきた」と仰るように、園芸をしていると植物を枯らすということは常に背中合わせではないかと思います。
種子だった頃はあんな寒さや乾燥、衝撃にも耐えられたのに、いざ発芽してしまうとHP1くらいの弱さから始まるイメージです。
実生自体にも多少のコツなどは必要ですが、それよりも発芽してからある程度の丈夫さを身につけるまでが、一番難しい気がします。
しばらくうまく育てれたのに、うっかり一気に溶かしてしまったりしたら、本当に落ち込みます。
万が一、育てている植物を枯らしてしまっても、なんで枯れたのかという原因にしっかりと向き合い、あきらめないで園芸を続けることが重要なのではと自分では考えるようにしています。
twelve 青木 健太朗